松本電気鉄道3000形電車
松本電気鉄道3000形電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | アルピコ交通[注 1] |
種車 | 京王電鉄3000系 |
改造所 | 京王重機整備 |
改造数 | 4編成8両 |
運用開始 | 1999年10月25日 |
投入先 | 上高地線 |
主要諸元 | |
編成 | 2両編成 (1M1T) |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流 1,500 V |
最高運転速度 | 50 km/h |
全長 | 18,500 mm |
全幅 | 2,872 mm |
全高 | 4,100 mm |
車体 | ステンレス鋼 |
主電動機 | TDK843-A |
主電動機出力 | 120 kW |
駆動方式 | 中空軸平行カルダン駆動方式 |
歯車比 | 85:14(6.07) |
編成出力 | 480 kW |
制御方式 | 界磁チョッパ制御 |
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松本電気鉄道3000形電車(まつもとでんきてつどう3000けいでんしゃ)は、1999年(平成11年)に松本電気鉄道(現・アルピコ交通)が導入した通勤形電車である。
概要
1986年(昭和61年)12月20日に上高地線の架線電圧を750Vから1500Vに昇圧して以降、同線では東京急行電鉄5000系を改造した5000形を運用していた。しかし新製から40年を迎え機器類の老朽化が進んでいたことや非冷房であることなどを理由に車両を取り替えることになり、当時京王電鉄で1000系の導入により廃車となった3000系を譲渡、京王重機整備にて改造・整備のうえで3000形として導入した。
沿革
1999年(平成11年)10月に2両編成2本(4両)が上高地線(松本駅 - 新島々駅間)で運転を開始。
2000年(平成12年)7月に2両編成2本(4両)が導入され、5000形は2000年7月19日を最後に営業運転を終了した。
2021年(令和3年)8月14日に令和3年8月の大雨によって田川橋梁が被災し、翌年6月に復旧するまでの間3003-3004編成が孤立区間である松本駅に取り残された。
2022年(令和4年)から東武20000系(20000型・20050型の中間車)を改造した20100形の導入による置き換えが開始され、2021~2024年度に20100形を1編成ずつ導入し最終的に本形式の全編成(2両編成4本)を置き換える計画で、当初は3003-3004編成が廃車となる予定だったが、後述の理由から2022年11月に3001-3002編成が本形式で初めて廃車され、12月2日に解体の為搬出された。[1]。
2024年(令和6年)2月7日には3007-3008編成の運転終了が公表され[2]、同年3月10日に引退し、3月28日に解体の為搬出された。
形式
形式と編成は下記の通り。8両全てが中間車から先頭車へ改造された車両である。
- モハ3000形 - 3001・3003・3005・3007
- 京王時代は1M方式の電動車デハ3100形。ドア窓ガラスは金属押さえ式。
- クハ3000形 - 3002・3004・3006・3008
- 京王時代はユニット方式の電動車デハ3050形。ドア窓ガラスはHゴム支持式。
3001-3002・3003-3004・3005-3006・3007-3008の2両編成4本が在籍する(左側が新島々寄り、右側が松本寄り)。運転席後ろの窓が連結面の小型窓の発生品となっている。3001・3003・3005・3007の種車がデハ3100形のため、長野県の私鉄では初の界磁チョッパ制御車となった。
改造内容
- ワンマン運転対応(運賃箱、案内表示機、運賃表設置)。
- 塗装は、白をベースに紫・ピンク・山吹・緑・赤のダイナミックストライプとロゴが入ったアルピコカラーとなった。ロゴの文字は「Highland Rail」。
- 運転台機器は京王6000系(抵抗制御の1次車・6001F - 6006F)の廃車発生品であるT字型ワンハンドルマスコンを採用。
- 全車ともワンマン運転時の運賃支払いの動線確保も兼ねて、運転台直後の座席のあった場所に車いすスペースが設置されている。
- 連結面には転落防止幌が設置されている。
- 3004・3008の前寄りには霜取り用パンタグラフが装備されている(京王時代は集電用)。3002・3006の同部分にはパンタ台のみが残されている。
- 3003-3004の種車でもあるデハ3108・デハ3058は京王時代、踏切事故により修繕扱いで同構造の車体がほぼ新製された。手摺り・側ドア・パイプ棚・冷房風洞は可能な限り再利用したが、客用扉は窓ガラスの支持方式がHゴムのものと、デハ3100形用の押さえ金支持式、破損不足分のものについては第28・29編成と同等の新製客用扉がランダムに取り付けられた。したがって、1両の中に複数の形態のドアが混在する。さらに軽量構造車体であり、コルゲートの本数が他車より少ない。
- 正面は京王3000系のリニューアル車(第16 - 29編成)と同等の、フロントウィンドウが側面まで回り込むデザインとなっている。ワイパーは電気式となっており、フロントウィンドウの左上に行先表示器を新設した。
- 車内
- 運賃箱
- 案内表示器
- 路線表示サボ
- 方向幕
編成表
- 2023年3月現在、2両3編成が在籍している。
- 形式()内は京王時代の車両番号。
形式 | ← 新島々 松本 → | ラッピング | 備考 | ||||
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モハ3000形 (デハ3100) | クハ3000形 (デハ3050) | ||||||
機器 | ■ ◇ | MG・CP(◇) | |||||
編成 | 3001 | モハ3001 (3109) | クハ3002 (3059) | 廃車 | |||
3003 | モハ3003 (3108) | クハ3004 (3058) | モハ10形リバイバルカラー | 休車 | |||
3005 | モハ3005 (3106) | クハ3006 (3056) | なぎさTRAIN | ||||
3007 | モハ3007 (3107) | クハ3008 (3057) | 廃車 |
- ■:界磁チョッパ制御装置、MG:補助電源装置、CP:空気圧縮機、◇:パンタグラフ
- クハ3000形の霜取り用パンタグラフは3004・3008の前位側に搭載(集電非対応)。
- レール塗油器は3002・3006に設置。
- これまで出版された趣味誌等では上記のとおりクハ3006が元3056、クハ3008が元3057とされているが、実車で確認したところ、クハ3006には「昭和41年 東急車輌」(3056は昭和39年製)、クハ3008には「昭和39年 東急車輛」(3057は昭和41年製)の銘板が車内および連結面にある。また、2024年3月の新村車両基地で開催されたイベントでのクハ3008(落書き電車)のドア上点検蓋の裏面に「3056」の記載があった。これらのことから、正しくはクハ3006が元3057、クハ3008が元3056であると推定される。
ラッピング・特別編成
なぎさTRAIN
- 2013年3月20日より、3005-3006編成に上高地線イメージキャラクター渕東なぎさをラッピングした「なぎさTRAIN」が運行されている[3]。この「なぎさTRAIN」はテレビアニメ『SHIROBAKO』第24話に登場する。同作の水島努監督は旧波田町で小学生時代を過ごした。2023年11月から3003-3004編成と入れ替わる形で休車になったが、2024年4月より営業運転に復帰している。
モハ10形リバイバルカラー
- 2017年6月3日より、昭和30年代〜昭和50年代にかけて上高地線で使用されたモハ10形電車のカラーリングを、3003-3004編成がラッピングで再現して運行している[4]。
- 2023年3月16日に定期運用を離脱し予備車として貸切列車などに使用されたのち、4月1日~11月の間は一度目の休車となり、同年11月より営業運転に復帰したものの、2024年4月から2度目の休車となった。
大雨災害による一連の動き
- なぎさTRAIN
- モハ10形リバイバルカラー
脚注
注釈
- ^ 2011年に松本電気鉄道より改称。
出典
- ^ 【鉄道】「3001号車・3002号車 引退記念乗車券セット」を販売します。(2022/11/3発売) アルピコ交通(2022年11月22日閲覧)
- ^ “【鉄道】「モハ3007号車+クハ3008号車」の運用終了について”. アルピコグループ. 2024年2月7日閲覧。
- ^ “上高地線で「なぎさTRAIN」運転開始”. 交友社『鉄道ファン』railf.jp. 2021年11月24日閲覧。
- ^ “アルピコ交通でリバイバル塗装列車の運転開始”. 交友社『鉄道ファン』railf.jp. 2021年11月24日閲覧。
- ^ 上高地線被災で留置の列車 廃車に 部品調達で活用(市民タイムスWEB)
- ^ 上高地線の車両に別れ 落雷で損傷 リサイクルへ - 市民タイムスWEB 2022年12月3日
- ^ 上高地線に現役復帰 昨夏の大雨で引退予定の車両 "同僚"に落雷で代走 - 市民タイムスWEB 2022年8月18日
- ^ 【鉄道】「モハ10形リバイバルカラー復活記念 撮影会&貸切乗車」(上高地線新村駅)を開催します(2022/8/28開催:第2部満員御礼) | アルピコ交通株式会社