プラネタリー・オブザーバー計画(プラネタリー・オブザーバーけいかく、Planetary Observer program)は、かつてアメリカ航空宇宙局(NASA)が実行していた、より安価な探査機で惑星探査を行う計画である。地球周回衛星の技術や部品を利用した共通の惑星探査機プラットフォームを採用することで、個々の探査機の設計・製造コストを抑える想定だった。しかし、この計画に基づいて製造されたのは火星探査機「マーズ・オブザーバー」1機のみであり、それ以降の探査はキャンセルされた[1][2]。
歴史
1970年代のNASAは、数十億ドルをつぎ込んだ大規模な宇宙計画を実行していたが、1980年代には、1990年代以降に向けてより安価に宇宙計画を実行する方向性が模索されていた。
1983年、NASAの太陽系探査委員会は、プラネタリー・オブザーバー計画とマリナー・マークII(英語版)という2つの計画を発表した。プラネタリー・オブザーバー計画は、太陽系内の各惑星の探査計画であり、地球周回衛星の技術を利用してコストを低く抑える構想だった。それに対して、マリナー・マークIIは、大型宇宙船により太陽系圏外を探査する計画だった[3]。
プラネタリー・オブザーバー計画の1号機として火星探査機「マーズ・オブザーバー」が1985年に承認され[4]、1992年に打ち上げられた。2号機の月探査機「ルナ・オブザーバー」は、1991年に承認され、1997年に打ち上げが予定されていた[5]。水星探査機「マーキュリー・オブザーバー」も、1997年の打ち上げを目指していた。しかし、1992年度の連邦議会による予算削減のため、2号機以降の計画はキャンセルされ、割り当てられた予算は全てマーズ・オブザーバーに投入された。
マーズ・オブザーバー
マーズ・オブザーバー(Mars Observer)は、火星の表面や気候の研究のために設計された無人探査機である。1992年9月25日に打ち上げられたが、火星の周回軌道に投入される3日前の1993年8月21日に探査機との通信が途絶し、そこから通信を再開させることができなかった。
ルナ・オブザーバー
ルナ・オブザーバー(Lunar Observer)は、1991年度にジョージ・H・W・ブッシュ大統領により初年度の1億8800万ドルの予算が承認された[6]。打ち上げ予定は1997年で、月の極の上空約70キロメートルの軌道に投入することが予定されていた。また、ソビエト連邦がこの計画に関心を示し、ソ連がNASAと協力して一部の機器を開発することも提案されていた[7]。しかし、前述のように1992年に計画はキャンセルされた。
脚注
- ^ “NASA Picks Basic Spaceship Over Awesome Alternative”. Associated Press. The Deseret News. (November 6, 1992). http://www.deseretnews.com/article/257783/NASA-PICKS-BASIC-SPACESHIP-OVER-AWESOME-ALTERNATIVE.html
- ^ Peter J. Westwick. Into the Black, Yale University Press, 2007, pp.175
- ^ Wilford, John Noble (March 7, 1989). “NASA Turns From Custom Design to Standard Models”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1989/03/07/science/nasa-turns-from-custom-design-to-standard-models.html?pagewanted=all&src=pm
- ^ Eberhart, Jonathan (October 19, 1985). “New starts and tough choices at NASA”. Science News 128 (16): 250. doi:10.2307/3970053. JSTOR 3970053. http://www.thefreelibrary.com/New+starts+and+tough+choices+at+NASA.-a03984543.
- ^ Broad, William J. (July 17, 1989). “New Phase on the Moon: U.S. Weighs a Return”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1989/07/17/us/new-phase-on-the-moon-us-weighs-a-return.html?pagewanted=all&src=pm
- ^ Rosenthal, Harry F. (May 12, 1990). “Mars Expedition Tab May Be Astronomical”. Associated Press. The Deseret News. http://www.deseretnews.com/article/101828/MARS-EXPEDITION-TAB-MAY-BE-ASTRONOMICAL.html?pg=all
- ^ Hills, Bruce (February 25, 1990). “2 Satellites to Orbit Moon in '96, U. physicist says”. The Deseret News: p. A1. http://www.deseretnews.com/article/90393/2-SATELLITES-TO-ORBIT-MOON-IN-96-U-PHYSICIST-SAYS.html?pg=all
|
---|
政策(英語版)と歴史 | 歴史 | - NACA (1915)
- アメリカ航空宇宙法(英語版) (1958)
- スペース・タスク・グループ(英語版) (1958)
- ペイン(英語版) (1986)
- ロジャース (1986)
- ライド(英語版) (1987)
- 宇宙探査構想(英語版) (1989)
- オーガスティン(英語版) (1990)
- CFUSAI(英語版) (2002)
- CAIB(英語版) (2003)
- ビジョン・フォー・スペース・エクスプロレーション (2004)
- オルドリッジ (2004)
- オーガスティン(英語版) (2009)
|
---|
概略 | |
---|
| |
---|
無人プログラム | |
---|
有人宇宙飛行 プログラム | |
---|
主なミッション(英語版) (無人・有人) | |
---|
通信と航法(英語版) | |
---|
NASA関連の一覧 | |
---|
|
|
---|
プログラム | |
---|
現行 | |
---|
過去 | |
---|
計画段階 | ルナグローブ | - ルナ26号(英語版) (2022)
- ルナ27号(英語版) (2023)
- ルナ28号(英語版)
|
---|
その他 | |
---|
|
---|
構想段階 | - バーデン=ヴュルテンベルク1号(英語版)
- ブルー・ムーン(英語版)
- CU-E3(英語版)
- DSEアルファ(英語版)
- 国際月ネットワーク(英語版)
- ルナ・ミッション・ワン(英語版)
- 月軌道プラットフォームゲートウェイ
- 月周回軌道ステーション(英語版)
- MoonLITE(英語版)
- Synergy Moon(英語版)
- TeamIndus(英語版)
- UZUME
|
---|
関連項目 | |
---|
|
|
---|
フライバイ | | |
---|
オービター | |
---|
計画 | |
---|
関連項目 | |
---|
太字の下線 は現役の宇宙機を示す |